桜の花びら舞う頃に
「じゃあ……拓海くん!」
さくらは近くにいた拓海を指名した。
突然の指名に驚く拓海、そして悠希。
何より、もう顔と名前を覚えていることに驚きだった。
「拓海くん、学校はどんなところだと思う? 先生に教えて」
さくらの問いに、文字通り頭をひねる拓海。
「ん~~~」
可愛いうなり声を上げながら、人差し指でこめかみあたりをクルクルと回している。
「……あ!」
どうやら、何か閃いたようだ。
「拓海くん、わかった?」
「えっと、学校は……」
みんなの視線が拓海に集まる。
「学校は、大きいところ!」
自信たっぷりに答える拓海。
そのアバウトな答えに、何人かの保護者からクスクスと笑い声が上がる。
「可愛い子ねぇ」
先ほどの母親が、また悠希にささやいてきた。
「ええ……元気な、いい子ですよ」
悠希は拓海から目を離さずそう答えた。