桜の花びら舞う頃に
「わぁ、いいニオイだね~」




ジュ~……




香りにつられて拓海がやってきた。


「美味しそうな香りでしょ、ニンニクって」

「うん!」


拓海は元気に答えた。


「拓海、テレビは?」

「今、コマーシャル~」


毎週放送されるアニメを楽しみにしている拓海。

話の前半が終わり、コマーシャルに入った所で2人の様子と、料理の進行具合を確認しに来たらしい。


「それじゃ、美味しいカレー作ってね~!」


そう言うと、拓海は物語後半に備えて部屋に戻っていった。

パタパタと部屋に戻る拓海を見送りながらも、菜箸を持つ右手と、大きな鍋を握る左手は動かし続けている。

熱した油の中の刻みニンニクは、徐々にキツネ色へ変わってきた。


「でも……悠希くん、上手いね」

「え? 何が?」

「料理。包丁でニンニクを刻む時も、お鍋で炒める姿もサマになってるもん」


そう言いながら、さくらは微笑んだ。

その動きに合わせ、束ねた髪が優しく揺れた。


さくらの長い髪は、ゴムで一つに束ねられている。

料理を作る時に邪魔になるからだ。


「ありがとう」


その髪型に新鮮さを感じながら、悠希も微笑んだ。


「実は、昔から料理って好きだったんだよ」


鍋の取手を両手でつかむ悠希。

その言葉に合わせ、鍋を強く振った。

シャーッという心地よい音が鳴り響く。

刻みニンニクは少しだけ宙を舞い、そして鍋の中に広がった。

辺りに、ニンニクの香ばしい香りが、再び漂っていった。









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