桜の花びら舞う頃に
(由梨とも、よくこんな風に料理を作ったっけ……)



昔を懐かしむ悠希。



(……って、もう、由梨のことは過去にするんだろ! 忘れるんだろ!)



悠希は強く頭を振った。

隣りでは、さくらが心配そうな表情で悠希を見つめている。



「ねぇ、悠希くん……大丈夫?」


「えっ!? な、何が!?」



さくらの言葉に慌てる悠希。



「何って……」



さくらはそっと指差した。



「腕……」


「……え?」


「腕……さっき、油が跳ねたでしょ」


「あ……あ~」



刻みニンニクを鍋に入れた時に跳ねた油。

熱いっ!と思いはしたが、口にはしなかったはずだ。



(よく見てるなぁ……)



悠希はつくづく感心した。



(これくらい気配りが出来ないと、小学校の先生は出来ないのかもな……)



うんうんと、うなずく悠希。


「ありがとう、さくらちゃん。大丈夫だよ」

「……そう?」

「うん、ほら━━━」


悠希はそう言うと、袖まくりをしてある腕を見せた。

腕は、多少赤くなっている程度だった。








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