桜の花びら舞う頃に
「ね?」

「うん……」


まだ少し心配そうな表情を浮かべながらも、悠希の笑顔にうなずくさくら。


「ところで、ニンニクだけど……」


あまり心配をかけても悪いので、悠希は話題を変えた。


「最初に、半分にスライスして芽を取ったけど……あれは?」

「うん、それは━━━」


そんな悠希の意図に気付いたのか、さくらも話に乗ってきた。


「ニンニクの芽は焦げやすいから、炒める前に取り除いたのよ」


人差し指を立て、少し得意気に答えるさくら。


「なるほど……そうすれば、弱火でじっくり炒められるね」

「そう。ニンニクってじっくり炒めないと、臭みがなかなか消えないから」

「臭みは消して……旨味は、より引き出して……か」


2人がその様な会話をしているうちに、鍋の中のニンニクはこんがりとキツネ色に炒め上がった。

2人は顔を見合わせうなずく。

そして悠希は、鍋の中に骨付きの鶏肉を入れた。

拓海は、チキンカレーが大好きだからだ。


この鶏肉にも少々工夫がしてある。

肉の薄いところに隠し包丁を入れておく。

こうすることで、食べる時に骨を取り分けやすくなる。

そして、隠し包丁を入れた鶏肉は、生姜をすりおろした料理酒の中につけておく。

こうすることで臭みが消え、肉の柔らかみは増すことになるのだ。


わざわざ、骨付き肉を選んだことにも理由があった。

この骨から出汁が染み出し、更に深い味わいを見せることとなるのだ。

まさに、悠希とさくらのコラボレーションと言えるだろう。







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