桜の花びら舞う頃に
ふと、さくらは床に目を向けた。



「ねぇ……今日の記念に、あたしが2人の絵を描いてあげようか!」



さくらは、床に転がっていたスケッチブックとカラーペンを拾い上げた。


「さくらちゃん、絵、描くの?」

「うん!」


ニッコリと微笑む。

そして、悠希と拓海を並ばせた。


「あたしね、嬉しかったことや、楽しかったことを絵にするのが好きなんだ」


そう話す間に、ペンはスケッチブックの上を滑り出す。

それは銀盤の上を滑るフィギュアスケートのように、滑らかで繊細で、それでいて力強いものだった。



「……はい、出来たっ!」


「えっ!? もう?」



描き始めて5分もしないうちに完成したことに、悠希は驚きの声を上げた。



「はい、どうぞ!」



さくらは、描き上げた絵を手渡す。



「うわぁ……」



その絵を見た2人は、それ以上言葉が出なかった。






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