桜の花びら舞う頃に
その時……
「そうね、拓海くん! 学校は大きいところよね!」
さくらの元気な声が響く。
教室の子供たち、そして後ろの保護者たちを見渡しながら、さくらは言葉を続ける。
「学校は、色々な人と出会える大きな所でもあるの。色々な人といっぱい遊んだり、いっぱいお話したり、いっぱい笑い合って、たくさんお友達を作っていくの」
さくらは、教壇に向かって歩きだす。
「もしかしたら、お隣りの席のお友達は、みんなが大人になっても……おじいちゃんになっても、おばあちゃんになっても、ずっと一緒に遊ぶお友達になるかもしれませんよ」
その言葉に、隣りの子と顔を見合わせる子供たち。
さくらは教壇に戻ると、子供たちの方に向き直る。
「先生は、みんなに勉強も頑張る、遊びも頑張る、そしてたくさんのお友達を作って、元気いっぱいの楽しい学校にしてほしいと思います」
そこまで言うと、さくらは大きく息を吸い込んだ。
「……みんな、出来るかな?」
「はーい!」
大きな声で元気に問うさくらに、それ以上の元気で答える子供たち。
その顔は、みなニコニコとした笑顔。
さっきまでの硬い表情が嘘のようだ。
その様子を見ている悠希、そして他の保護者たちにも、自然と笑顔がこぼれている。
「そう、その笑顔を忘れないで。上級生のお兄さんやお姉さん、もちろん先生たちも、みんなが入学してくるのを、とっても楽しみにしていたのよ」
その言葉で、子供たちの緊張は完全に吹き飛び、キラキラとした表情へと変わっていた。