桜の花びら舞う頃に
寄り添って立つ親子の絵。

肩に手を回す父親に、その手を握り締める息子。

2人とも、とても穏やかで柔らかな笑みを浮かべあっている。

その絵を眺めていると、心地よい春の日差しを浴びているかのように、胸の中に温かいものが広がっていく。



2人の顔には、自然と笑みが浮かんでいた。



「……どう?」



言葉少ない2人に、さくらは恐る恐るたずねる。


「……さくらちゃん」


悠希は、ゆっくりと顔を上げた。

さくらは、ゴクッと唾を飲み込む。



「さくらちゃん……凄すぎるよ!」



果たして、出てきた言葉は賛美のそれだった。


「眺めていると……凄く、幸せな気持ちになれる」

「うん、なんかねー、嬉しくなる感じー!」


悠希と拓海は、口々にその絵をほめた。


「あははっ! あまり言われると照れちゃうなぁ」


さくらは、少し恥ずかしそうに笑った。

さくらの絵をしばし眺めていた拓海は、突然立ち上がった。


「今度は、僕が先生を描いてあげる!」

「た~君が?」

「うん! 先生、そこに立って!」


そう言うと、さくらを指定の位置に立たせる。

さくらは、髪をとめていたゴムを外すとポーズを取った。

髪を整え、あごを軽く引いて優しく微笑む。


「可愛く描いてね」

「まかせて~!」


さくらに負けないくらい、拓海のペンも軽快に踊り出す。







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