桜の花びら舞う頃に
ガチャッと音を立て、さくらは玄関の扉を開いた。

アパートから漏れた光が、一筋の明かりとなって辺りを照らす。



「お外……真っ暗……」



拓海はつぶやいた。



「あたし……1人で帰れるかな……」



思わず本音が漏れる。

辺りは、昼間とは違う景色を見せていた。



「さくらちゃん、1人で帰るのは……」


「……パパ!」



拓海はくるりと振り返ると、悠希の手を取った。



「先生を送って行こう!」


「えっ?」


「だって、女の人に夜道を1人で歩かせるワケにはいかないじゃーん」



拓海は、得意げに人差し指を立てた。


「お前……そんな言葉、どこで覚えてきたんだ……」


思わず苦笑いが漏れる。


「えっ……いいよ、いいよ」


さくらは、そこまでしてもらうのは悪いと遠慮の言葉を出した。


「でも、拓海の言うとおり、夜道は危ないから。それに……」


悠希は、少しイタズラな笑みを見せた。



「帰り道……まだ、よくわからないでしょ」







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