桜の花びら舞う頃に
第28.5話『もっと強く抱きしめたなら』
「さくらちゃん!」



悠希のただならぬ雰囲気に、さくらは足を止めた。

ゆっくりと、悠希の視線の先を振り返る。



「あっ!」



さくらの目にも、迫り来るセダンの姿が見えた。




(ぶつかる!!)




その瞬間、さくらは強い力で引っ張られた。


手にしていたバッグが地面に落ちる。


高級セダンは、2人の側をスピードを緩めることなく走り抜けていった。




「悠希くん……?」


「……大丈夫? さくらちゃん」


「うん……」



さくらは、悠希に抱きしめられていた。



さくらが迫り来るセダンに気付いた時、悠希の懸命に伸ばした手は、さくらの手首をつかんだ。


そして、そのまま片手で強く引き寄せる。


さくらはバランスを崩し、悠希にもたれかかった。


悠希は片手で抱きしめるようにして、さくらの体を支えたのだった。







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