桜の花びら舞う頃に
ふと、エリカは悠希の背中に目をやった。


「あれぇ? もしかして、この子がこの前言ってた子?」


エリカは、拓海の顔をのぞき込む。


「だ、だめ、た~君は寝てるんだから!」


あわてて、エリカを止めるさくら。



「……僕、起きてるよ」



しかし、さくらの声に反応して拓海は顔を上げた。


「えっ、た~君起きてたの?」

「うん……にぎやかだったから、目が覚めちゃった」


悠希の背中で、背伸びをする拓海。


「う……ごめんね、た~君」


さくらは、今更ながら、我を忘れてエリカと張り合ったことを後悔した。



拓海は、周りをキョロキョロと見回す。

そんな拓海に、エリカは笑顔を浮かべて手を振った。

一瞬、不思議そうな顔をする拓海だったが、すぐに笑顔を返して挨拶をする。


「はじめまして、月島 拓海ですっ!」

「きゃー! 可愛いっ!」


エリカの黄色い声が夜空に響く。



(この前、子供は嫌いって言ってたんじゃ……)



思わず突っ込む悠希とさくらだったが、流石に今は口にしなかった。










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