桜の花びら舞う頃に
第30話『どうにもとまらない』
夜空を雲が流れていく。


少し風が出てきたようだ。


少し湿気を含んだ風。


それは、まもなく訪れる梅雨の季節を表していた。



「お姉ちゃん……誰?」



拓海の言葉に、微笑むエリカ。

風が、エリカの髪をそっと揺らす。


「アタシは、悠希パパの……」


チラリと悠希の顔を見る。





そして━━━





「……彼女よ」


「違う!」



悠希とさくらは、同時に否定した。


「子供にウソつかないで!」


怒るさくらに、エリカは首をすくめ、その舌をペロッと出す。


「今は違うけど……これから……ね?」

「いい加減にしてって言ってるでしょ!」


全く反省の色が見えないエリカに、さくらはいらだちを募らせる。


「そんなに怒らないでよ~! シワが増えるよ?」

「なっ……!!」


このエリカの態度には、もはや言葉も出てこない。



(あたし……やっぱ、この子ダメだぁ……)



さくらは天を仰ぎ見た。






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