桜の花びら舞う頃に
━━━その時




夜の闇を切り裂いて、まばゆい光が4人の姿を照らし出した。

4人は、その明かりに目を細める。


明かりは、青いクーペのヘッドライトから放たれていた。

スピードを落とし、近づいてくるクーペ。



(な……何?)



さくらは、思わず身構えた。


青い流線型ボディのクーペ。

エアロパーツを装着したその姿は、スポーティーな雰囲気を更に高めている。


クーペはゆっくりと近付くと、4人の隣りでその動きを止めた。

ややあって、運転席側の窓が静かに下がる。

さくらは、ゴクリと唾を飲み込んだ。



「あーっ!」



不意に拓海は、大きな声を上げた。



「香澄ちゃんだー!」



嬉しそうな様子を見せる拓海。


「こんばんは、た~ちゃん」


窓から顔を出して、香澄も笑顔で挨拶をした。


「……知り合いなの?」


たずねるさくらに、悠希はうなずいた。


「会社の先輩なんだ」


香澄は、そのやり取りを見つめる。


「こんばんは、月島くん。……こちらの方々は?」


香澄は悠希に挨拶をすると、お互いを牽制しあっているように見えた2人のことを聞いてきた。


「はじめまして、綾瀬 さくらです」


さくらは、姿勢を正して頭を下げる。


「彼女は、た~の担任なんだ」

「そうなの!?」


香澄は驚きの声を上げると、そそくさと車から降りてきた。


「いつも、た~ちゃんがお世話になってます」


頭を下げる香澄に、さくらもあわてて頭を下げる。


「先生って、もっとカチッとした格好してるイメージがあったから……」


今日のさくらは、裾の短い薄桃色の花柄ワンピースに、レギンスを併せるというスタイルだった。


「今日は学校じゃありませんから」


そう言って、さくらは微笑んだ。

その言葉に納得した様子の香澄。

大きくうなずくと、拓海の方を見た。


「可愛い先生で良かったね」


拓海は、少し照れたような笑顔を見せながら、鼻の下をこすっていた。








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