桜の花びら舞う頃に
「で……」



続いてエリカに視線を向ける。



「……こちらの方は?」


「はーい! アタシは悠希の彼女でーす!」


「ち、違いますよ!」



あわてて否定する悠希。


「だから、嘘をつくなって言ってるだろ!」

「えへへ、ごめんネ」


強い口調で注意するが、彼女には大して効果がないようだ。


「あの……本当に違いますからね」


さくらも、悠希のフォローをする。

香澄は、そんなさくらに微笑んだ。

その表情には、余裕が伺えた。



「大丈夫、月島くんの好みじゃないのは分かってるから」



その言葉に、エリカの細い眉がピクリと動く。


「ちょっと! それ、どういう意味よっ!」

「気に障ったのならごめんなさい。でも、事実だから」


声を荒げるエリカに、サラリと答える香澄。


「ア……アタシのドコが悠希の好みじゃないって言うのよっ!!」


香澄は腕組みをすると、エリカを値踏みするように見た。



「……まず、服装ね。何、その派手な格好……」



本日のエリカは、ゼブラ柄のタイトなミニワンピースに、白のロングブーツ、シルバーのアクセサリーという出で立ち。

かなり挑発的な格好と言えよう。



「月島くんはね、そんなケバケバしい女は嫌いなの!」


「ち、違う! 悠希はそんなことない!」



言い放つ香澄に、エリカは必死に食らいつく。


「アンタの格好なんて、アタシから言わせてもらえれば物足りなさすぎるのよ!」


対する香澄は、ジーンズにブランド物のTシャツ、それに空色の上着を羽織るという格好だ。



「もっと、女としての武器を生かした方が、悠希は絶対喜ぶんだから!」


「つ、月島くんは、そんなことに魅力を感じる人じゃないわ!」




(何故にこの人たちは……俺の好みを……勝手に決めているのだろう……)




真っ向からぶつかり合う2人に気圧され、悠希は心の中でつぶやくしかなかった。








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