桜の花びら舞う頃に
激しく火花を散らす2人。

その炎は、今にもこちらに飛び火しそうな勢いだ。

しかし、その炎を鎮火しようと立ち上がるものがいた。



「もーっ、2人ともーっ!」



大きな声を出し、拓海は悠希の背から飛び降りた。

そのまま、香澄とエリカの元に歩いていく。



「もうっ、ケンカしちゃダメっ!」



間に入った拓海は、頬を膨らませ2人の顔を代わる代わる見た。



(あ……あれ、あたしが喧嘩してる子を止める時にやるやつだ……)



2人の間に入り、交互に顔を見る。

それは以前、さくらが学校で子供たちの喧嘩を仲裁した時にやったことだった。

拓海は、それを見ていたのだろう。

そこで覚えたことに、更に『頬を膨らます』という拓海のオリジナルの要素を加え、今この場で使う。

そのことに、さくらは嬉しさを感じていた。




拓海に言われたとあっては、さすがに喧嘩を続けるワケにはいかない。

2人とも、咳払いをし、息を整える。



「た~ちゃん、香澄ちゃんたち、喧嘩なんかしてないよ~」


「そ、そうそう! アタシたちは、ただ話し合ってただけよ!」



そう言って、2人は拓海に笑顔を向けた。



「……うん!」



そんな2人に、拓海も笑顔を返した。


激しく燃え上がった現場は、1人の小さな消防士の力で無事に鎮火した。

そして、そこには温かな空気だけが残されている。

それも、この小さな消防士のお手柄だった。







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