桜の花びら舞う頃に
「……ところで香澄さん、今日はどうしたんです?」


悠希は、この空気が戻らぬうちに次の話題を切り出した。


「え? あ、うん……ちょっと用事があってこっちに来たから……」


香澄は、悠希の思惑に乗って話だした。


「せっかくだから、月島くんのところに遊びに行こうと思ってたの」


そう言って、香澄は悠希に笑いかけた。


「悠希の家? アタシも行きたーい!」

「あんたはいいの!」


しかし、またもや2人の間は怪しい雲行きとなる。

そして、その雲は、さくらの心にもかかっていた。



(香澄さんも……悠希くんのこと……好きなんだろな……)



エリカと張り合う香澄。

時折、悠希を見つめるその瞳は、明らかに特別な感情を抱いているように見える。



(悠希くんは……気付いてないみたいだけど……)



さくらは、横目で悠希を見た。

悠希は、再び険悪なムードになりつつある2人を、必死になだめ抑えようとしている。



「私の方が、月島くんのこと知ってるのよ!」


「アタシだって、これから知っていくモン!」



しかし、もはや、どうにも止まらない。



(2人とも……素直だなぁ……)



さくらは、うつむきながら下唇をキュッと噛んだ。







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