桜の花びら舞う頃に
「ちょっと……2人とも、いい加減に……」


「……悠希くん!!」


悠希の言葉をさえぎって、さくらは悠希を呼んだ。

3人の動きが一瞬止まる。

その声の大きさは、さくら自身も驚くものだった。



「……どうしたの? さくらちゃん」



問いかける悠希。



「……」



さくらは、右手で胸を押さえた。



「さくらちゃん……?」



さくらは、顔を上げる。



「……ううん。……あたし、帰るね」


「え?」


「ここまで来たら、もう大丈夫だから……ね?」



そう言って、さくらは笑顔を作った。



「さくらちゃん……ごめんね」


「ううん、今日は楽しかったから」



その笑顔には、どことなく寂しさを感じる。


悠希が気を許したスキに、香澄とエリカはまたお互いを牽制し出す。

その様子を横目で見るさくら。



「た~君、また学校でね」



しゃがみ込み、寂しそうな様子の拓海を、そっと抱きしめる。


しばしの包容の後、さくらは立ち上がった。



「今日はありがとう」


「ううん、あたしの方こそ……色々ありがとう」



お礼を言う悠希に、さくらは答えた。

後ろの剣幕とは別に、2人の間には沈黙の空気が流れている。





「……じゃあ」




「……うん」




「……またね」





さくらは小さく手を振ると、4人に背を向けて歩き出した。

後ろは振り返らない。

自然と足が早まるのを、自分でも感じていた。

悠希と拓海は、去っていくさくらの姿を、ただ無言で見つめていた。








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