桜の花びら舞う頃に
第1話『桜』
風はまだ少し肌寒いが、日差しは暖かい春。

その優しい暖かさの中に吹く風は、心地がよいものだ。


桜が咲き乱れるこの美しい季節。

悠希(ゆうき)は、この季節が一番好きだった。

風に舞う桜の花びらを見つめていると、心にポッカリとあいた穴を埋めてくれる様な気がするからだ。



「わ~、桜がキレイだね~」



悠希のとなりで無邪気な声が響く。

つないだ手を嬉しそうに振る我が子に、悠希は優しい笑みを向けた。

今日は悠希の長男、拓海(たくみ)の入学式なのだ。




正門を抜けると、ため息が漏れるくらい見事な桜がアーチとなって正面玄関まで続いている。

そのアーチの下を歩いていく2人。

普段着なれないスーツに身を包んだ拓海は、どことなくぎこちなく歩いている。

それがまた可愛らしさをかもし出していた。




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