桜の花びら舞う頃に
さくらは今、麻紀のアパートにいる。

悠希たちと別れた後、自分のアパートに真っ直ぐに帰る気になれず、そのまま麻紀のアパートを訪れたのだった。



「だって麻紀ちゃん、納得いかないよー! エリカは、ずっと玲司くんのことが好きだったんだよ!? それが……!」



さくらは、玲司を見る。


「そんなこと言われてもなぁ……」


玲司は、新たなグラスを用意し、そこに新しい飲み物を注ぐ。



「エリカは、ああいう性格だから……」


「おかしいよ、そんなのっ!」




さくらは荒げた声と共に、再び玲司からグラスを奪い取った。

そして、そのまま一息に喉へと流し込む。


「ああ……また俺の……」


玲司の悲しげなつぶやきをよそに、さくらは中身を全て飲み干した。



「……それに、あの香澄って先輩! 」



空いたグラスを、叩きつけるようにテーブルに置く。

テーブルは、ガンと大きな音を立てた。



「礼儀正しくて……大人で……た~君と仲良くて……」


「……いい人じゃん」



玲司は、すねたように空のグラスを人差し指で弾いた。

グラスは、高く澄んだ音色を奏でる。



「納得いかないっっ! ……でも、一番納得いかないのは……」






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