桜の花びら舞う頃に
そして━━━






「麻紀ちゃんは……あたしのものなのーっ!」


「待てぃ!」




抱きついてくるさくらの額に、チョップを入れる麻紀。

そのやり取りに、玲司は腹を抱えて笑う。



「さくらちゃん、そんなに麻紀が好きだったら、2人で結婚しちゃえば?」


「……おおっ!」


「『おおっ!』じゃないっ!!」



玲司の冗談に、ポンと手を打つさくら。

そして、素早いツッコミを入れる麻紀。


「玲司~ぃ……このコにお酒を飲ませたでしょ……」


腕に絡み付くさくらを指差して、麻紀はため息をついた。


「あはは、ごめんごめん! ……でも、俺が飲ませたワケじゃないよ?」


実は、先ほどさくらが奪ったグラスには、2杯ともアルコールが入っていた。

アルコールの度数はさほど高いとはいえないが、2杯も一気に飲み干せばそれなりに酔いも回るだろう。

桜色に頬を染め、腕に絡み付くさくら。




「でも━━━」




麻紀は、そんなさくらを見つめた。



「久しぶりに聞いたなぁ……さくらが男の人の話するの」


「……そうだっけ?」


「ほら……高2の春休み以来じゃない?」



さくらは、過去に想いを巡らせる。

しばしの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。



「うん……涼ちゃんのとき以来かも……」



さくらは、麻紀を解放すると、少しだけ遠い目をした。








< 202 / 550 >

この作品をシェア

pagetop