桜の花びら舞う頃に
昔を思い出し、少し沈んだ表情になるさくら。

その空気を破って、玲司は立ち上がった。



「あ~、腹が減った! 俺、ちょっとフレアまで弁当買いに行ってくるよ」


「お腹減ったの? 私、何か作ろうか?」



続いて立ち上がろうとする麻紀を、玲司は手で制した。



「いや……麻紀の手料理も捨てがたいけど、今はフレアの弁当が食べたい気分なんだ」



洋風居酒屋フレアは、パフォーマンスだけではなく、料理の味も有名だった。

そのため、お土産としてテイクアウトを希望する客が多くなり、いつしかテイクアウト専用メニューとして『弁当』が現れた。


弁当にも様々なメニューがあり、訪れる者を飽きさせることはない。



「でも……うちからだと、片道20分くらいかかるよ?」



心配する麻紀に、玲司は「大丈夫」と笑ってみせた。

そして、麻紀に近づくと、そっと耳打ちをする。



「俺がいない方が……さくらちゃんも話しやすいだろ?」







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