桜の花びら舞う頃に
第32話『想い…。』
静かな時。


遠くで、電車が走る音だけが聞こえてくる麻紀のアパート。




「悠希くんのことが、好きなんでしょ!」




さくらは、麻紀の言葉を思い返す。


その度に、胸の中に温かいものが広がっていく。


にへ~っと、笑みを浮かべるさくら。



「こんな気持ち、久しぶり……」



さくらは、そっとつぶやく。



「……ねぇ、さくら」



麻紀は、真剣な眼差しでさくらを見つめた。



「手放しで喜ぶのは……まだ早いんじゃない?」



真っ正面から見つめて言う麻紀。

その様子に、さくらも真剣な表情になる。



「そうだね……」



そして、大げさにテーブルに突っ伏す。



「悠希くんが……あたしのことを好きかどうか……わからないもんね……」



顔を横に向け、さくらはワイングラスを指ではじいた。


「それは……大丈夫だと思うけど……そのことじゃなくて!」

「あ、エリカと香澄さん? ……うん、あの2人は、手ごわそうよね~」


はあっと、さくらはため息をつく。


「うん、確かに……って、そうじゃなくて!」







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