桜の花びら舞う頃に

悠希は、果てしなく広い空間にいた。


上も下もわからない。


自分が立っているのかすら、わからなくなりそうなくらい、そこは広く何もない空間だった。




「また、この夢か……」




つぶやいた、その時━━━



悠希は、不意に背中を叩かれた。





(これは、きっと……)





悠希は、ゆっくり振り返る。



「……由梨」



そう、いつもと同じ夢━━━





━━━ただ、いつもと違っていたことは……





由梨は、猫の着ぐるみを着ていたということ。





(そういや、昔、バイトで着たって言ってたっけな……)





悠希の心の中に、




愛しさと




懐かしさ




切なさと




悲しみの想い




それらが混じり合い、激しく吹き荒れた。






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