桜の花びら舞う頃に
第33話『おはよう』
走る━━━
どこまでも走る━━━
広く、何もない空間を、悠希と由梨は手をつなぎ、走り続けていた。
「由梨、いったいどこまで……」
悠希が、そう問いかけようとした時、由梨はすっと前方を指差した。
そして、悠希に顔を向け優しく微笑む。
悠希は、由梨が指差す先に目をこらした。
「誰か……いる?」
まだ遠くて人の判別は出来ないが、確かに誰かが立っているのが見える。
「由梨、あれは……?」
由梨は微笑んだまま、ゆっくり口を開いた。