桜の花びら舞う頃に
しばらく、我が子の寝顔を眺めていた悠希。

やがて、その頭をくしゃっとひとなですると、出口に向かって歩き出した。



「ん……パパ……」



(し、しまった……起こしちゃったか?)



不意に響く拓海の声。

悠希は、あわてて後ろを振り返った。


しかし、拓海は先ほどと何一つ変わらない。


「なんだ、寝言か……」


ホッと胸をなでおろす悠希。

楽しい夢でも見ているのだろうか、拓海の寝顔はとてもニコニコしている。

それにつられて悠希も笑顔になる。

拓海の笑顔には、周りの人をも不思議と笑顔にさせる魅力があった。


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