桜の花びら舞う頃に
悠希の目覚まし時計は、悠希が小学校に入学した時の記念に買ってもらったものだった。


当初は、綺麗な純白のボディだったこの時計。


長い歳月により、それはクリーム色に変色している。


しかし、それがまた味わい深さをかもし出していた。




悠希が、この時計を20年以上も愛用してきたことには理由があった。


それは音。


この目覚ましのベルの音でないと、悠希はスッキリと目を覚ますことができないのだ。


電子音目覚まし時計や携帯電話のアラーム等も試してはみたが、やはりこの目覚まし時計にかなう物はなかった。




(今朝は、スッキリかどうかは疑問だけどな……)




悠希は、再び苦笑いを浮かべる。


そして、一挙一動を見つめていた我が子の頭を、くしゃっと一なでした。



「おはよう、た~」








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