桜の花びら舞う頃に
しかし……




「……いや、違う。この音は会社関係じゃないぞ……」




友人からの着信音だと気付いた悠希は、ホッと胸をなでおろした。



「はい、もしもし?」


『よ~う、悠希!』



電話の相手は、毎度ながらテンションの高い玲司。


「……相変わらずのテンションだな」

『まあな』


そう言って、2人は笑い合った。


「で……今日は、どうした?」

『いや、ちょっと、いいモノが手に入ってさ……8時頃、悠希んちに行ってもいいかな?』


時計を見る。

時刻は、午後7時半前。


今から帰れば、8時には余裕で間に合だろう。


「わかった、いいよ」

『りょ~かい! じゃ、8時頃にな!』

「OK! ……で、いいモノって……」




プーップーップーッ……




その正体を聞こうとした悠希だったが、すでに電話は切れていた。


「ったく……せっかちなヤツめ」


携帯電話を助手席に放り投げると、エンジンをかける。

車は、ゆっくりと駐車場から動き出した。



「いいモノ……か……」



その言葉が気になるが、それは会ってからのお楽しみということだ。


悠希は自分に言い聞かせ、アパートに向かってアクセルを踏み込んでいった。


拓海の待つ、我が家を目指して……









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