桜の花びら舞う頃に
「……そういや、電話で言ってた『いいモノ』って?」



悠希は、玲司に視線を戻すと問いかけた。


「ん……ああ、コレだよ」


玲司は、スーツの内ポケットからチケットを取り出す。



「それは……?」


「遊園地の無料招待券! 得意先からもらったんだ」


「遊園地か……」



悠希は、由梨を失ってから遊園地に行ったことがなかった。


別に、遊園地が嫌いなわけではない。


むしろ、由梨を失う前は、あちこちの遊園地によく遊びに行ったものだ。




ただ……




それだけに、そこには沢山の思い出が詰まっていた。


訪れれば、あの時の気持ちが嫌でも蘇る。


つらい気持ちも蘇る。


そして、由梨のいない今、そこには何の意味を見いだせない。


それが、遊園地を拒絶している理由だった。







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