桜の花びら舞う頃に
「悪いが、遊園地は……」


「遊園地ー!? 行きたいー!」



断りの言葉を言いかけたその時、拓海が間に割って入ってきた。


「た~!?」

「ねぇ~、パパぁ。あざみちゃんちも、この前、遊園地に行ったんだって……」


あざみちゃんというのは、拓海の隣りの席の女の子だ。



「僕も……行きたいな……」



寂しげに、うつむく拓海。


小学1年生で、遊園地が嫌いな子がいるはずない。


おそらく拓海は、その子の話をうらやましく思いながら聞いていたに違いない。




(そうか……そうだよな……)




拓海にまで、身勝手な自分の想いを押し付けることは出来ない。


普通の子たちと同じように、様々な場所を見せ、体験させてあげる。


そして、そこから色々なことを感じ取ったり、思い出を作ってもらいたい。




拓海まで、自分のように縛られることはないのだから……




「……ダメ?」


「た~……」



消え入りそうな声で、たずねる拓海。


悠希は、拓海の頭に優しく手を置いた。



「ほら、ちゃんと玲司にお礼を言いなさい」


「……パパ、それって……!」


「ああ、久しぶりにいっぱい遊ぼうな!」



みるみるうちに、笑顔になる拓海。



それは、まるで向日葵(ひまわり)の花のような笑顔だった。



由梨が大好きだった、向日葵の花にそっくりな笑顔で……






(今の俺には、た~がいる。俺はた~の為に、今、出来ることをしなければならないんだ……!)








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