桜の花びら舞う頃に
遊園地は、今度の日曜日に玲司たちと一緒に行くことになった。






そして、約束の日曜日……






「パパ、早く行こうよ!」


「待ち合わせは、9時半だぞ? ちょっと早すぎるって」



笑う悠希だったが、体中から嬉しさが溢れている拓海に従い、少し早めに待ち合わせ場所へと向かうことにした。


待ち合わせは、洋風居酒屋フレアの駐車場に午前9時30分集合。

遊園地までの移動方法は車。

その車は、悠希が出すことになっていた。







「ほら、早かった」


フレアに到着した悠希は、拓海に笑いかける。

時間は9時を少し回ったところ。

見たところ、玲司たちはまだ来ていないようだ。


「まぁ……当たり前か」


悠希は、車から下りると、軽く背伸びをした。


店は、まだ開いてはいない。

悠希は、フレアの駐車場に備え付けられた自動販売機へと歩く。

助手席から下りた拓海も、悠希の後に続いた。


「た~は、いつもの?」

「うん、りんごジュース!」





『1日1個のりんごは、医者を遠ざける』





(確か、イギリスのコトワザだったよな……)





そんなことを思いながら、自動販売機からりんごジュースを取り出して手渡す。


「ありがと!」


受け取った拓海は、一足先に車へと戻っていった。


「俺は……コーヒーでいいか」


ボタンを押す悠希。

缶コーヒーは、なかなか激しい音を立て落ちてきた。


腰を曲げ、自動販売機から缶コーヒーを取り出そうとした、




その時━━━




「……話し声?」



拓海が、誰かと話している声が聞こえてきた。




(案外早く、玲司たちも来たんだな)




悠希は缶コーヒーを取り出すと、拓海の話し声が聞こえる車へと向かった。



「玲司、意外と早かっ……」



悠希は、それ以上言葉が出なかった。



「あ……ゆ、悠希くん……」



そこにいたのは玲司たちではなく……




さくらだったのだから……







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