桜の花びら舞う頃に
言葉もなく、しばらく見つめ合う2人。




その沈黙を破ったのは、さくらだった。



「あたしも……」


「……え?」


「あたしも、飲み物買おうかな……って……」



再び訪れる沈黙。


2人の間を、風が通り抜ける。



その沈黙は、今度は悠希によって破られた。



「……ぷっ! くっくっくっくっ……」


「悠希くん?」


「あはははははっ!」


「な、何? あたし、何か変だった?」



慌てたように、自分の格好を見るさくら。


「い……いや、ごめん、ごめん」


悠希は、涙を拭うと自動販売機を指差した。


「おごるよ」

「え……? い、いいよ」

「いいから、いいから。遠慮しないで」


そう言って、悠希は笑った。


「うん……じゃ……ありがとう」


伏し目がちに、お礼をいうさくら。


「いいえ~。……さくらちゃんは、何飲む?」

「じゃ……紅茶を」

「OK!」


悠希は料金を入れ、ボタンを押す。

紅茶は、悠希の缶コーヒーの時のように勢い良く落ちてきた。

それを拾い上げながら、悠希は会話を続ける。



「しかし……偶然だね、さくらちゃん」


「うん、偶然……こんな時刻にね」



そう言って、さくらも笑う。


「さくらちゃんも、どこか出かけるの?」


言いながら、悠希はペットボトルの紅茶を手渡す。



「ありがとう……うん、麻紀ちゃんたちと待ち合わせなんだ」


「そっか~」


「悠希くんたちは?」


「俺は、玲司たちと待ち合わせ」


「そうなんだ~」



しばしの沈黙。





2人の頭に浮かぶ『?』の記号。





「「えっ!?」」





2人は同時に驚きの声を上げ、顔を見合わせた。


「お、俺たち、遊園地のチケットが手に入ったから一緒に行こうって玲司に……」

「あ、あたしも、麻紀ちゃんに遊園地に誘われて……」







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