桜の花びら舞う頃に
第35話『POWER』
「あと、どれくら~い?」



後部座席から、拓海の声が響く。


「もうちょっとだよ」


悠希は、前を向いたまま答えた。


「よっぽど、楽しみなのねぇ」


助手席のさくらは、ハンドルを握る悠希に笑いかける。


「そうだね……でも……」


何回もたずね過ぎと、悠希は苦笑した。



実は、拓海のこの質問は、今回が初めてではない。

遊園地へと向かう車内で、実に5回も同じ質問をしているのだった。




(まぁ……久々の遊園地だし……楽しみで仕方ないんだろうけど)




悠希は、ルームミラーでチラリと後ろを見る。



玲司と麻紀に挟まれた後部座席の拓海は、いつもにもましてニコニコしている気がした。








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