桜の花びら舞う頃に
車は山道にさしかかる。


しかし山道と言っても、舗装され、綺麗に整備された道なので、特に苦に感じるものではない。


季節は、もうすぐ夏至。


その陽気に精一杯に葉を広げる緑の木々は、生命の息吹きを強く感じさせてくれた。


その向こう、はるか遠くには、いくつもの山が連なってそびえている。



「麻紀ちゃん……」



さくらは、麻紀を振り返った。


「うん、懐かしいねぇ……」

「景色……全然、変わってないもんね~」


遠い日の思い出に浸るかのように、2人は目を細めた。


「何? 何? 2人とも、この辺に来たことあるの?」


玲司は、そんな2人の顔を交互にのぞき見る。


「うん、私の叔父さんが経営する旅館が、この先にあるのよ」


麻紀は言う。


「温泉も、料理も最高なんだよ!」


さくらも、嬉しそうに続いた。




麻紀の叔父が経営する旅館『笹の葉』。

この旅館は温泉と料理が有名で、地方紙に何度も取り上げられている。




「へぇ~! 今度行ってみたいね~!」

「行きたーい!」



悠希の言葉に、拓海が可愛らしい声を上げて続いた。



「じゃ、もしかして、今日行く遊園地のことも知ってる?」


「うん!」


「私たち、バイトしたこともあるんだよ」


「そうなんだ~! ……どんなバイトしたの?」


「ケレスっていうレストランでね……」






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