桜の花びら舞う頃に
「行っちゃったね……」


「うん」


「た~君、やめるなら今のうちよ?」


「大丈夫だよっ!」



さくらの言葉に、元気に答える拓海。

その視線は、トロッコが現れるアトラクションの出口を見つめている。


「でもね、た~君……」

「もしかして……さくら先生、怖いの?」


あまりにしつこいさくらに、拓海は大きな瞳を更に大きくして尋ねた。


「ち……違うわよ! 先生は、お化けなんて全然怖くないのよ?」


さくらは、拓海を正面から見つめて言う。


「ただ先生は、た~君のことが心配で……」

「来たーっ!!」


しかし、さくらの言葉は、拓海の大きな声に遮られてしまう。


「行こっ! 先生!」

「まだ、話終わってないのに~」


拓海に引っ張られ、トロッコに乗り込むさくら。

そんな2人の様子に笑みを浮かべながら、悠希もその後に続いた。



3人を乗せたトロッコは、ゆっくりと暗闇の中に消えて行った。







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