桜の花びら舞う頃に
「え~、そうなのー!?」



しかし、拓海はその言葉に不満の声を上げる。


「た~君!?」


玲司は、うつむく拓海をチラリと横目で見ると口を開いた。



「麻紀……拓海のこと……」


「うん?」


「悠希に、教えてあげた方が……」


「も、もういいよー!」



うつむいていた拓海は、バッと顔を上げると、あわてたように玲司の口をふさぐ。


その拓海の様子に、麻紀の脳裏にある答えが浮かんだ。




(もしかして……パパがママ以外の人と仲良くしてるのが、嫌なのかな……)




「何だよ拓海~! だって、お前……」


「じ、自分で言うもん!」



そう言うと、前に座る悠希とさくらに向き直った。



「うわっ、冷たっ!」

「だ、大丈夫? 悠希くん。……はい、ハンカチ」



前では、飲み物をこぼした悠希に、さくらが自分のバッグから取り出したハンカチを手渡しているところだった。



「パ……パパっ!」



うわずった声で、拓海は割って入る。


「ん? どうした、た~?」

「あ……あのね……」


小さな拳を、キュッと握る拓海。




「あのね……」







そして……






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