桜の花びら舞う頃に
「……オシッコ」




一瞬、静まり返る車内。


しかし、それはすぐに打ち破られる。


「大変! 我慢できる? た~君」

「どこか寄るから、ちょっと待ってろ!」

「う……うん」

「あ、悠希くん! この先にコンビニがあるよ!」


車内は、にわかに活気づく。




(なんだ……オシッコだったんだ……)




自分の考えが間違っていたことに、麻紀は苦笑した。



「……話と違うなぁ」



しかし、不意に聞こえてきた玲司の一言。


その言葉に、麻紀は拓海と玲司の方を振り向いた。



「だ、だって……」



隣りの拓海は、玲司に肩を抱かれ、再びうつむいている。



「だって……恥ずかしくて、やっぱり言えないよぅ!」



顔中を真っ赤にしている拓海。

その様子に、麻紀の頭に疑問符がよぎった。



「ねぇ……」





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