桜の花びら舞う頃に
「ありがとね、玲司」



家まで送ってもらった麻紀は、玲司にお礼を言う。


「お茶でも、飲んで行けば?」

「最初から、そのつもりだよ」


麻紀の言葉に、玲司は笑いながら靴を脱ごうとした━━━






━━━その時。







『~~~♪』






玲司の携帯が、メロディーを奏でる。


一瞬、


『うわ~っ』


という表情を浮かべる玲司。


しかし、すぐに真面目な表情になると電話に出た。



「はい、三上です……」



麻紀は、そっと紙とボールペンを手渡す。


「はい……はい……わかりました、今から向かいます」


その紙に用件を書き込むと、玲司は電話を切った。


「ごめん……行かなくちゃ」

「うん、お仕事頑張って!」


申し訳なさそうな表情を浮かべる玲司に、麻紀は笑って応える。



「すぐ帰ってくるから!」



そう言い残すと、玲司はあわただしく飛び出していった。





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