桜の花びら舞う頃に
麻紀はため息をつくと、優しくさくらの頭をなでた。



「でも……悠希くんと付き合ったら、きっと大変なこともあるんだよ?」


「うん……」


「教師と保護者って関係だけじゃなく……た~君のこともあるんだから」


「わかってる……」


「それでもいいのね?」



麻紀は、さくらの瞳を見た。



「あたしは……それでもいい!」



見つめた瞳には、強い意志が感じられた。





しばしの沈黙。





そして……





「わかった……」




麻紀は、静かにうなずいた。



「今はまだ暗闇かもしれないけど、手探りでもいいから前に進んでみるのもいいんじゃない?」


「麻紀ちゃん……!」


「……ただし!」



今にも抱きついて来そうなさくらを、麻紀は牽制しつつ言葉を続ける。



「大変なこともたくさんあるだろうから、ちゃんと覚悟しておくこと!」


「うん、あたし頑張る!」



さくらの顔に、笑顔が戻る。

その顔に、麻紀は満足そうにうなずいた。





< 272 / 550 >

この作品をシェア

pagetop