桜の花びら舞う頃に

「初代会長、亡き後って……」



悠希は、着替えながら言う。



「確か……その息子が、二代目会長になったんだよな……」



当然ながら、答えは返ってこない。

しかし、悠希は言葉を続ける。



「そして、新社長には二代目会長の息子……俺の２歳上だっけな……」



この独り言は、悠希の癖であった。


最初は、由梨を失った寂しさを紛らわせるために、ワザと言っていたものだった。


しかし、いつしかそれが本当に癖となり、無意識のうちに独り言を言うようになっていたのだった。



「俺と同じくらいの若さで、巨大企業の社長……どんな気分なんだろ……？」



悠希は、ため息をつく。

そして、テレビに背を向けて座ると、靴下をはきはじめた。