桜の花びら舞う頃に
あの日は……




梅雨だというのに……




朝から晴れていたんだ……





(……って、こらっ!)





悠希は頭を振って、感傷に浸りそうになる気持ちを追い出した。


「パパぁ?」


その様子を、拓海は不思議そうに見つめる。


「いや、何でもないよ」


悠希は微笑む。


そして、


「ほらっ、た~も着替えちゃえ」


と、ソファーの上に用意した、拓海の外出着を指差した。







今の俺には、た~がいる……



た~の前で……



感傷的になるわけには、いかないんだ……




た~のために……



そして、由梨のために……



悲しみに沈んだ顔を、見せるわけにはいかないんだ……







その後のテレビでは、午後から晴れの予報が流れていた。










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