桜の花びら舞う頃に

「お前、1年生になったんだから、おしっこ漏らすなよ~」


はがしたシーツを片手に、部屋に戻りながら文句を言う悠希。


「聞いてんのか~?」


しかし、着替えが終わった拓海は、ソファーの上ですやすやと眠っている。


「ったく……」


悠希はため息をつく真似をすると、寝室から布団を持ってきて拓海にかける。


「ベッドはちょっと湿っぽいし、今日はここでいいか」


そして、シーツと脱ぎ捨ててあるパジャマをつかむと洗面所へと向かう。



『おしっこが付いたら、一度手洗いしてから洗濯機に入れるのよ』



由梨の言葉が頭に浮かぶ。

ニオイが、その服や他の洗濯物につかないようにするというのが、その理由だ。


悠希は濡れたシーツとパジャマを軽く手洗いすると、洗濯機に放り込んだ。


「これでよし」


悠希は満足げに言うと、部屋へと戻った。


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