桜の花びら舞う頃に
由梨の墓参りを済ませた7人は、その後、駐車場へと向かった。


駐車場への道には、いくつもの水たまりがある。


「ほらっ、た~君、気をつけて」


そう言って拓海を制しながら、さくらは水たまりの脇をすり抜ける。


「ねえ、先生~!」


自分を呼ぶ声に振り返ると、水たまりの向こう側で拓海が笑顔を浮かべていた。


「先生、手~出して~」

「手?」


疑問に思いながらも、さくらは素直に手を伸ばす。

拓海は、その手をしっかりと握り締めた。


「いくよ~、先生~!」

「え?」


次の瞬間、さくらは手を強く引かれる。



「きゃっ!」



拓海は、さくらの手を支えに、目の前に広がる水たまりを飛び越えようというのだ。



「ん~~~!!」



少々バランスを崩しながらも、さくらは足を踏ん張る。

拓海は、さくらにぶら下がる形で水たまりを飛び越えていった。



「わ~い、大成功~!」



着地を決めた拓海は、はぁはぁと息を切らすさくらの前で、無邪気に飛び跳ねて喜んでいる。



「……た~君!」



さくらは、少し低い声を出した。


「やるなら、やるって言ってくれないと……先生、ビックリしたわよ」

「えへへ、ゴメンナサ~イ」


拓海は、少しバツが悪そうに首をすくめる。



しかし、その顔には笑みが浮かんでいる。



そして、その笑顔は、さくらやそれを見ていた者たちにも伝染していくのだった。








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