桜の花びら舞う頃に
その様子を見ていた拓海は、握っていたさくらの手を離す。


そして、小走りで悠希の隣りに並ぶと、



「ありがと!」



と、可愛くお礼を言い、悠希にならって頭を下げた。


その姿は、見る者の胸の奥を熱くさせるものだった。



さくらは右手を握り締めると、胸に強く押し当てる。

想いを伝えたい気持ちはあるが、さくらの口からは何も言葉が出なかった。




7人の間を、湿気を帯びた風が通り抜けていく。



小鳥のさえずる声が、今までより大きくなった。

さくらは、そんな感覚を覚えていた。




やがて、悠希と拓海はゆっくりと頭を上げる。

そして、2人は見つめ合うと、どちらからともなく微笑むのであった。








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