桜の花びら舞う頃に
「インパクト写真コンテストがあったら、間違いなく賞が取れるな」



その写真をながめながら、悠希は笑顔を見せる。


「玲司は、昔からオイシイやつだったからな~」


悠希はクスクスと笑いながら、外出用の服に着替えた。



「キッスの~まほ~♪ む~ねがドキドキ~♪」



その後ろを、可愛い歌声が歩いていく。


愛息の拓海だ。


口ずさんでいるのは、今売り出し中の女性アイドルの歌。

人気アニメの主題歌をつとめ、ラジオやテレビなど、各メディアに注目されている。


「た~は、あのアニメ大好きだからな~」


つぶやきながらも、着替えを済ませた悠希。

次は、鏡に向かい髪を整える。


「そろそろ……髪を切りに行くかな……」


耳にかかる髪を、そっとつまんだ。



「パ~パ~?」



その時、玄関の方から拓海の声が聞こえてきた。


「今、行くよー!」


悠希は短く答えると、財布と携帯電話をつかむ。

そして、玄関へと向かった。






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