桜の花びら舞う頃に
「じゃ、夕方迎えに来るからな」


「うん、またねー!」



夏の透き通った青空の下、拓海の声が元気に響く。

悠希は拓海の頭をひとなですると、姿勢を正した。


「じゃ、すみませんがお願いします」

「大丈夫よ、た~ちゃんはお利口さんだから」


そう言って笑うのは、拓海の祖母であり由梨の母である、すみれだ。


「ゆっくりして来なさいね」

「バイバーイ!」


2人に見送られ、悠希は由梨の実家を後にした。








止めてある自分の車の前まで来ると、ジワッとにじみ出る汗を手の甲で拭う。



「今日も暑いな~」



つぶやきながら、悠希は愛車のドアを開けた。

その途端、とてつもない熱気が悠希を襲う。


「うは……ちょっと止めておいただけで、コレかよ……」


悠希は中に入らずエンジンをかけると、そのまま手を伸ばし携帯電話をつかんだ。

車内に放置されていた携帯電話は、ホカホカと温まっている。


「外の方が、まだマシだな……」


悠希は苦笑しながら、出かける直前に来たメールを開く。

もう一度、内容に目を通すと、返信画面を開くためのボタンに指を伸ばした。






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