桜の花びら舞う頃に
「なぁ……」



再び物思いに更ける悠希に、玲司は声をかける。



「お前さ……」


「うん?」


「最近……さ」


「うん」


「……キスした?」


「!?」



唐突なその質問に、悠希は思わず目を見開いて玲司を見る。


「うわっ、ちょ、お前、運転ーっ!」


驚きのあまり蛇行運転になる車。


「ま、前を見ろってーっ!!」

「えっ!?」


玲司の悲鳴で我を取り戻した悠希は、あわてて前に視線を戻した。

そして、何とか車の体勢を立て直す。


「ふう……対向車が来なくて良かったな……」


額の汗を拭う悠希。



「玲司が、突然あんなこと聞くから!」


「……あれくらいで、そんな漫画みたいなリアクション取られたら……」



そう言って、玲司はため息をつく。



「体が、いくつあっても足りません……」


「う……悪かったよ……」



謝る悠希に、玲司は再び視線を向けた。





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