桜の花びら舞う頃に
「で……どうなの?」

「……キス?」



悠希は、少し考える素振りを見せる。



「うん……た~とは時々してるかな……」


「言うと思った……」



玲司は、再びため息をつく。


「じゃなくて、女の子とだよ!」

「……そんな相手……いないの知ってるだろ」


今度は、悠希がため息をつく。


「お前さ……」


玲司は、マジマジと悠希の顔を見た。


「な……何だよ?」


強い視線を感じた悠希は、ゴクリとツバを飲み込む。



「さくらちゃんと……キスしたいとか思わないのか?」


「え……!?」





さ……さくらちゃんとキス……!?





「そ、そんなこと……考えたこともないよ……」


「考えてみろよ」



そう答える悠希に、玲司は静かに言った。



「由梨ちゃんだって、きっとお前の幸せを……」

「さくらちゃんの……唇……」




「もちろん、さくらちゃんじゃなくても、他に誰かいい人がいるなら……」

「さくらちゃんの……唇……」



しかし、玲司の言葉は、悠希には届いていない。





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