桜の花びら舞う頃に
「こっち、こっちー!」



先頭を走る拓海。

その後ろにヒマワリ、悠希、玲司と続く。

すみれは、家の仕事があるからと、この場には同席していなかった。




(この方向は、裏山だよな……)




由梨の実家、星野家は、市街地から少し離れた場所にある。

そのため、この辺りはまだ自然が残されていた。


拓海が今向かっているであろう裏山は、星野家の裏手の道を進んだ先にある。




(でも……あんなところ、何もないはずだけど……)




裏山と言っても、それほど大袈裟なものではない。

小高い丘が広がっているだけだ。

そのため、星野家の人々も、裏山を特に利用することはなかった。


離れた場所に土地を持っている。

ただ、それだけだった。






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