桜の花びら舞う頃に
土の地面を走る3人と1匹。

走りながら、悠希はふと空を見上げた。



青く澄んだ空。



しかし、東の空には黒い雷雲が見える。

どうやら、上空は風が強く吹いているらしい。

雷雲が、太陽を追いかけるように広がっていくのがわかる。

それは、まるで青色のキャンバスに黒い絵の具をこぼしたかのようだった。


「た~、いったいどこに……」

「ねぇ、2人ともー!」


空を気にした悠希は、前を走る小さな背中に声をかける。

しかし拓海は、その言葉を遮りながらクルリと振り向くと、その足を止めた。



「2人とも、手を伸ばして」

「手?」



顔を見合わせる悠希と玲司。

しかし、ここは素直に拓海の指示に従う。

伸ばされた2人の手を取った拓海は、ニコッと微笑んだ。



「じゃあ、今度は目をつぶってー」



無邪気に言う拓海。


「おいおい……本当に、何なんだよ?」

「まだ、内緒だもーん!」


苦笑いする悠希に、拓海はイタズラな笑みを見せる。


「いいよ、悠希。付き合ってやろうぜ」


玲司は、軽く笑いながら目を閉じた。


「ったく……」


悠希も、目を閉じる。

その様子に、拓海は満足げにうなずいた。





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