桜の花びら舞う頃に
「悠希……」


無邪気にはしゃぐ拓海をしり目に、玲司は声をかける。

振り返った悠希は、悲しみの表情を浮かべていた。



「玲司……俺はやっぱり……さくらちゃんとは会えない」



悠希は、再び向日葵に目を向ける。



「さくらちゃんと一緒にいると……由梨といた時の、あの時のような気持ちになれる……」



湿気を帯びた風が、頬をなでる。



「でも……俺は、由梨を幸せにすることが出来なかったんだ……」



上空の強い風が、地表付近にまで吹いてきた気がする。



「そんな俺が……由梨を置いて幸せになることなんて……出来るわけがないよ……」



振り返った悠希は、微笑んでいた。

しかし、その微笑みの裏側に深い悲しみがあることを、玲司は気付いていた。





２人の間に、沈黙が訪れる。





周りは風の音と、葉がすれる音。

そして、拓海とヒマワリが向日葵畑の中でじゃれあう声しか聞こえなかった。







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