桜の花びら舞う頃に
「うぬぼれるなよ……」



その沈黙を破り、玲司がうめくようにつぶやく。


「れ……玲司?」

「うぬぼれんなって、言ってんだよ!」


戸惑う悠希に、玲司は声を荒げた。



「由梨ちゃんを幸せに出来なかった? ……ふざけんな!」



玲司は、悠希の胸ぐらを両手でつかむ。



「短い間かもしれないけど……お前や拓海と一緒に過ごした時は、幸せじゃなかったと言うのかよ!」


「そ、それは……」


「それに……」



不意に、玲司の両手から力が抜ける。



「お前が、由梨ちゃんの幸せを願ったように……」



そして、悠希はゆっくりと解放された。



「……由梨ちゃんだって、きっとお前と拓海の幸せを願っていたんだ……」


「玲司……」



空からの湿った風は、一段と強く向日葵畑を吹き抜けていった。








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